魚を食べる時、焼く、煮る、蒸す、生、どれがいい?
- Kenji Yamada

- 12月12日
- 読了時間: 4分
文:山田賢児(Y personal training gym 代表・管理栄養士)

私が箱根駅伝を目指していた学生時代、そして社会人になってからの大切な大会前、必ず意識していたことがあります。
それは 「刺身を避ける」 という選択でした。
理由はシンプルで、アニサキスや細菌による体調不良のリスクを避けるためです。
良い状態でスタートラインに立つためには、どれだけ練習を積んだかと同じくらい、“何を食べるか・どう食べるか” が勝負を左右することがあります。
また、減量期には 焼き魚を選ぶことで余分な脂を落とし、摂取エネルギーをコントロール していました。
とはいえ、魚の脂には心臓血管の健康を支えるEPAやDHAなど、身体に欠かせない良質な脂質が多く含まれます。
アスリートとして、管理栄養士として、私は「脂を避ける」こと以上に「脂を味方につける」ことの大事さを学んできました。
では、魚はどの調理法が一番良いのでしょうか?
結論:目的によって“最適な調理法”は変わる
多くのクライアントから
「刺身・焼き魚・煮魚・蒸し、どれが一番体に良いですか?」
と質問されます。
結論から言うと、
✔ 最適な調理法は
目的(安全・減量・栄養)によって変わる
安全性を最優先 → 加熱(焼く・煮る・蒸す)
減量 → 焼く(脂が落ちやすい)
栄養(EPA・DHA) → 蒸す or 煮る(脂を残しやすい)
風味・嗜好 → 刺身(ただし衛生管理が重要)
「一番良い調理法」ではなく、
自分の目的に合った選び方 が大切 です。
科学的根拠と調理法の特徴
日本の公的データでも明確に示されていますが、
生魚にはアニサキスや細菌による食中毒のリスクがあります。
厚生労働省は「加熱または冷凍によるアニサキスの無害化」を推奨しています。
一方で、文部科学省の食品成分表を見ると、EPA・DHAなどの魚油は加熱しても一定量残ります。
そのため「焼くと栄養が全部逃げる」というのは誤解です。
さらに、調理法には次の特徴があります。
焼く
余分な脂が落ちる → 減量向き
皮や表面が香ばしく食べやすい
ただし、焦げは健康上リスクがある(高温調理でベンゾ[a]ピレン[発がん性があるとされる]が発生)
→ 焼きすぎ注意
煮る
EPA・DHAなどの良質な脂を残しやすい
柔らかい食感で消化が良い
塩分が多くなりがち(煮汁の摂りすぎ注意)
蒸す
もっとも“脂を残しつつヘルシー”な調理法
余計な油を使わない
食材の旨味が生きる
→ 栄養 × 体調管理に最もバランスが良い
生(刺身)
魚の旨味を最もダイレクトに味わえる
ビタミンB群など熱に弱い栄養を保持
ただし 他の調理法よりも食中毒リスクがあるため、鮮度と管理が重要
→ 大会前の私が避けていたように、体調最優先の時期には向かない
私自身の体験と、今のクライアントへのアドバイス
アスリート時代は、生魚を避けたり、減量中は脂を落とす焼き魚を選んだりしていました。
しかし管理栄養士として多くの人を見てきた今、私はこう思っています。
「魚の脂は、避けるものではなく、目的に応じて味方につけるもの。」
EPA・DHAは体の炎症を抑え、血流を良くし、脳の働きにも関わります。
40~50代のクライアントでは特に恩恵が大きく、疲れやすさの改善にもつながります。
また油脂を摂取すると、腹持ちが良くなるので減量中の食欲コントロールにも役立ちます。
だからこそ、
毎回同じ調理法ではなく、生活の中で実践しやすい調理法の選択をおすすめします。
私の哲学
「口にしたもので自分自身(細胞)が作られる。」
魚の脂も、調理法の選択も、その日の体調をつくり、未来の細胞をつくります。
無理なく続けられることが一番大切です。
まとめ
「どれが一番良い?」の答えは 目的によって変わる
安全性なら加熱、減量なら焼き、栄養なら蒸す・煮る
刺身は楽しめるが、体調優先の時期は避ける選択も賢明
魚の脂は“敵”ではなく“味方につける”
調理法を使い分けながら、無理なく続けることが健康への近道
【参考文献(日本の公的機関・最小限)】
厚生労働省「アニサキス等の食中毒に関する情報」
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」





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