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満腹まで食べても低カロリーなら太らない?

  • 執筆者の写真: Kenji Yamada
    Kenji Yamada
  • 10月10日
  • 読了時間: 4分


大盛りのヘルシー食品
大盛りのヘルシー食品

結論


 「低カロリー食品だから満腹まで食べても太らない」とは言えません。体重の増減はエネルギー収支(摂取エネルギーと消費エネルギーの差)で決まります。低カロリーであっても、トータルで消費量を上回れば体重は増加します。  しかし、現実的には低カロリーな食品を山ほど胃袋に詰め込んで、結果高カロリーになるなんて稀なケースだと考えています。

 また、カロリーは概ね計測が可能ですが、満腹は感情(感覚)によるもので、満腹と感じるレベルも人により異なり、また時により異なるでしょう。

 結論をいきなり覆すことになりますが、太らない為に低カロリーを意識して食べる事は無駄ではありません。カロリーを気にする場合には、カロリーを含む三大栄養素『タンパク質(4kcal/g)、脂質(9kcal/g)、炭水化物(4kcal/g)』のうち、脂質(9kcal/g)を減らすのが最も効果的ですが、脂質は細胞膜やホルモンの材料として貴重です。私はほぼエネルギー源としての役割しか持たない炭水化物(糖質)の摂取を気を付けるよう会員の皆様には伝えています。



カロリーについての科学的な背景


厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』やe-ヘルスネットでは、肥満の原因を「エネルギー収支の正味の蓄積」と説明しています。


・摂取>消費 → 体重は増加

・摂取<消費 → 体重は減少

・摂取=消費 → 体重は維持【厚労省:e-ヘルスネット】


また、体脂肪1kgは約7,000kcalに相当するとされています【厚労省:健康づくりのための身体活動基準】。たとえ「低カロリー」食品でも、大量に摂取すれば積み重なりとしてエネルギー過多になり得ます

満腹についての科学的背景

満腹とは、脳が感じる「もう十分だ」のサインです。

脳(特に視床下部)の満腹中枢、が「もう十分」と判断したときに起こる感覚です。

胃の膨張や血糖値、ホルモンなどの信号が迷走神経を介して脳に伝わり、「満腹中枢(視床下部の腹内側核)」が活性化することで食欲が抑えられりとされます。


満腹を決める主な3つの信号


① 機械的信号(胃の膨張)

食べた量が増えると胃壁が物理的に伸びます。

この伸展刺激が迷走神経を通じて脳に伝わり、「もう十分入っている」と認識されます。

→ 水分・食物繊維・スープなど“かさ”の多い食品は、この機械的満腹感を起こしやすい。


② 代謝的信号(血糖値・脂肪酸など)

食事後、血糖値や血中の遊離脂肪酸が上昇すると、膵臓や肝臓を経由して脳に情報が送られます。

特に血糖値の上昇は**摂食抑制ホルモン(インスリン)**の分泌を促し、これも脳の満腹中枢を刺激します。

ただし、急激な血糖上昇→急降下を繰り返す食事(高GI食)は、食後2時間〜3時間で空腹感感じやすくなり、過食のリスクが上がります。


③ ホルモン信号(腸内からの化学的メッセージ)

消化管は“内分泌器官”として多くのホルモンを分泌します。

ホルモン名

分泌部位

働き

グレリン

空腹を感じさせる(食前に上昇)

CCK(コレシストキニン)

小腸上部

食事中に脂質・たんぱく質で分泌され、満腹を伝える

GLP-1 / PYY

小腸・大腸

食後に分泌され、満腹を強め、胃排出を遅らせる

レプチン

脂肪細胞

長期的に体脂肪量を脳へ伝え、食欲を調整

これらのホルモンが視床下部の満腹中枢(腹内側核)や摂食中枢(外側野)に作用し、食欲のオン・オフを制御します。



満腹感までの時間

食べ始めてから満腹感が脳に届くまでには約15〜20分かかります。

そのため、早食いは満腹中枢が反応する前に摂取量が増え、結果的に食べ過ぎになります。



→ 「ゆっくり食べる」「よく噛む」「最初に野菜や汁物を摂る(低カロリー且つ堆積と水分が多い)」ことが、過食防止に役立つ科学的根拠です。



満腹とカロリーの関係


満腹感は、胃のふくらみや、ホルモンによる感覚であり、カロリー(エネルギー量)とは必ずしも一致しません。

たとえば

→500kcalの野菜スープなら満腹になりやすい

→500kcalのスナック菓子はすぐ食べ終えても満腹を感じにくい


つまり、「満腹まで食べても太らないか?」は、満腹を感じる仕組みと摂取カロリーの関係を混同していることになります。




まとめ


・満腹は「胃」「血液」「ホルモン」など多層の信号を脳が統合して判断する生理的現象。

・満腹感の強さと摂取カロリーは必ずしも比例しない

・満腹をコントロールするには、「かさのある食品」「ゆっくり食べる」「高GI食(血糖値が上がりやすい)を避ける」ことが『太らない』に有効です。



文=管理栄養士・山田賢児(Y personal training gym 代表)


出典・根拠

厚生労働省 e-ヘルスネット「満腹感と食欲の制御」

日本人の食事摂取基準(2025年版)

日本内分泌学会「食欲制御ホルモンの作用機序」

Rolls BJ et al. “Volume of food affects satiety in lean and obese women.” Am J Clin Nutr. 1998.

Blundell JE et al. “Appetite control: methodologies and integrative models.” Physiol Behav. 2010.





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